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「研修リーダーインタビュー」の更に裏側。新人研修はデザインされ尽くしている


こんにちは。教育チームの赤坂優太です。

3回にわたってお送りした研修リーダー・インタビュー、いかがでしたでしょうか。

今回は番外編として新人研修をデザインしている私から「カリキュラムの狙い」「その裏に隠れた人材育成の理論」という種明かしをお送りします。

世の中の多くの社会人は新人研修を「受けた」経験はあります。でも、新人研修を「作った」経験のある人は多くはないはずです。研修リーダーが「コンサルタントとしての自分でそのまま振る舞えばいいはず」と誤解していたように「受ける」のと「作る」のは大違い。今回は新人研修を作り上げる、その裏側をお伝えします。

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種明かし① 「個の力」は「伸ばす」もの?

フューチャーの新人研修は「個の力」というキーワードが出てきます。

蒲田:「個の力」が鍛えられます。自分の進捗にあわせて、というか節目に用意されているテストを合格しないと次に進めません。(中略)2019年からカリキュラムを大幅に見直し、個の力をちゃんと伸ばし切る、という部分をフォーカスした研修に進化しています。
屋宜:学生時代は勢いだけで推し進められることも、研修ではアウトプットを出して、それが基準を満たしてないと進めません。ロジカルさ、確かな技術力が求められます。
蒲田:大学の勉強ともまた違いますよね。覚えただけでは意味がありません。相手に説明できるまで理解を深めないと、次に行けないんです。

「個の力」の一例として、「ロジカルさ」や「確かな技術力」が挙げられています。では、どの程度のロジカルさや技術力だと思いますか?

実は、極端に難しかったり高度なことを求めているわけではありません。

例えば、ソロ・ワークの口頭試問では、事前に出題して、かつ本人が正解したコーディングテストの一部を抜粋して、「コーディングテストで◯◯と書かれていた部分を、△△に書き換えると、プログラムの動きはどう変わりますか?」ということを聞きます。実際にプログラムを実行させること以外は、何を調べてもOKです。

新人研修概要

コーディングテストのときに「プログラムが動いちゃっただけの人は、「そもそもどんなポイントを聞かれているのか?」理解できず、どんなに調べる時間があったとしても正解にはたどりつきません。

一方、中身までしっかり理解した人、つまりコーディングテストのときに「プログラムを動かせた」人にとっては、「あー、あのことね!」と、「何を聞かれたのか?」がすぐにピンと来て一瞬で正解できます。

フューチャーの新人研修が目指している「個の力」というのは、なにも高度な、難しいことを身に着けさせようとしているわけではないのです。「個の力」は「伸ばす」(伸長)と一般に形容されますが、フューチャーの新人研修における「個の力」「詰める」(充填)ものだと思っています。

器自体の大きさではなく、その器にどれだけ中身が詰まっているか。「相手に説明できるほど理解している」という基準をもって、中身の詰まり具合を確認します。

口頭試問_001

口頭試問は1対1で進める
屋宜:(前略)仕事は自分の経験や知識という「点」を、「線でつなぐ」作業が多いと思っていて。でも普通に仕事をしていると意外に点って得られないものです。

新人研修を終えた新人は、現場でのOJTに進みます。そのときに線でつなぐための「点」を、できるだけたくさん渡すのが新人研修の役割です。中身が詰まっていないのに、器だけを大きく(扱う範囲を広く高度に)しても、すなわち輪郭のぼやけた「点」を新人に渡しても、彼らが現場で線をつなぐときには使えません。

現場の人からすると「範囲も狭いし、難易度も低い」ことかも知れないけれど、新人本人が「ここはしっかり身につけた!」と胸を張れる部分をひとつずつ増やしていくのが大切です。そのために研修リーダーの多くの時間を使って、口頭試問やレビューというチェックポイントを設けています。

種明かし② 研修リーダーの口癖

研修リーダーが、新人に対して「ある言葉」を繰り返し伝えたと、インタビューの中で話していたことに気づきましたか?

屋宜:自分が仕事の時に無意識で行っていることを新人ができていない時は何が良くないのか、周りからはどう見えるのかを言語化して伝えます。これがなかなか難しいですね。
蒲田:さっきの設計書の「概要」みたいなのも、仕事だと先輩が直してしまって本人は気づけないままということも多くて。一つ一つこう見えるよ、とフォローできるのは、研修ならではです。
屋宜:3週目には隔週の1on1が始まるので、ひとりひとりの個性が見えてきます。それにあわせて1on1で「こういうふうに見えますよ」というのを伝える。

そう、研修リーダーの口癖は「◯◯と見えますよ」です。

この口癖、研修リーダーは意図的に使っています。

フューチャーの新人研修は「実際にやってみて、その結果を振り返って、次はどうすればいいかを考えて、再びやってみる」という経験学習サイクルに貫かれています。「講義で説明するだけ」「講義で説明してから実践させる(実践したら終わり)」という普通の研修とは一線を画しています。

この経験学習サイクルをうまく回すためには「振り返りを促す他者」が重要、とも広く言われています。自分のことを客観的に見て、声をかけてくれる人が必要なのです。研修リーダーの立ち位置を、人材育成理論に引き寄せて説明すると、「経験学習サイクルにおける、振り返りを促す他者」となります。

蒲田:初日から、周囲からはどう見えるかを全体に向けてフィードバックします。そうすると、2週目には変わる人と変わらない人に分かれてくるんです。1回言えば次から自分でできるようになる人と、伝わってない人、できない人というのが出てきます。

研修リーダーは、「◯◯と見えますよ」という言い回しを使って、新人たちの映し鏡になろうとします。

自分たちの言動が、ビジネスの場ではどんなふうに周囲の目に映るのか。

1回言えば次から変わる人とあるように、新人に対して「ああしなさい、こうしなさい」と具体的指示を出さなくても、「◯◯と見えますよ」と、本人の言動が周囲にどう映っているかを「知らせる」だけでも、新人の成長というのは引き出されます。

「◯◯と見えますよ」によって、自身が周囲にどう映っているのか理解した新人は、他の場面にもそれを応用して、自分の頭で考えながら適切な振る舞いを見出します。

これも新人に渡す「点」のひとつです。

一方で、「ああしなさい」という指示には、「なぜ、そうするのか?」「いつ、そうするのか?」という視点が抜けており、新人が次に同じような場面に遭遇したとき、自分の頭で考えて(自らの経験を振り返って)適切な振る舞いをみつけるのは難しいです。

蒲田:隔週で研修リーダーとの1on1を新人全員と行っています。その場でちゃんと聞く、話す、というのを愚直にやっています。
屋宜:(前略)スペシャルな講義があるとかではなく、生身の先輩社員である研修リーダーが常にそばで寄り添い、かつ結果は求められる、という現場と同じ温かさと厳しさがあるところだと思います。

フューチャーの新人研修は、「結果に厳しい」というチャレンジの側面と、「研修リーダーがいつもそばにいて寄り添う」というサポートの側面が、うまく補完しあうように「チャレンジ&サポート」のデザインに貫かれています。

種明かし③ 研修リーダーは現場に「そのまま戻る」わけではない

フューチャーの新人研修の特徴は、「個の力」「経験学習」といった、「新人の学び方」にとどまりません。

屋宜:「研修リーダーが新人を見ている」と思いきや、逆に「新人に見られている」と強く感じましたね。現場に戻っても下から見られていることは意識すると思います。(中略)仕事は「完全成果型」ではあるけど。そこに至るまでの自分の立ち居振る舞いや相手からの見え方という過程まで意識することが大事だと思うようになりました。
蒲田:今まで、プロジェクトの推進はしてきましたが、大義まで言語化できていなかったと気づき、後悔というか、心残りがあります。今後はそういう視座をもって目の前の仕事を捉えて、自分から視座を上げていかないとなと思います。

今後について研修リーダーの2人はこんな思いを話してくれました。今までの「現場での自分自身」を、研修リーダーという別の立場から、改めて意味づけしなおしています。

そう、新人だけではなく、研修リーダー自身も経験学習をしているのです。

人材育成の分野には越境学習という考え方があります。所属している組織をいったん飛び出して、未経験の分野に立ち向かうことで新しい気づきを得て、そしてまた組織に戻る。その気づきによって、自分自身が成長したり、元の組織でさらに活躍するというものです。越境学習の実例として、海外赴任、副業、NPOでの活動などがよく挙げられます。

研修リーダーは、現場→新人研修→現場という短期間での「現場との出入り」を通して、フューチャーにいながらにして、越境学習をしていることになります。その結果、研修リーダーを終えるときには、前と同じ役割に戻るという意味で文字通り現場に「戻る」のではなく、新しい視座を得て現場で「違う景色を目にする」ことができます。

研修リーダーが越境学習のための期間とできるように、「新人からのフィードバック」「メンターとの1on1」という2つの取り組みをしています。

蒲田:新人は研修リーダーに対して距離を感じていることにも気づきました。「6年上の先輩って、新人からすると、もう社長と同じくらいの距離感なのかもよ」と、赤坂さんが以前話していた通り、私たちのことをものすごく遠い人、完璧な人として捉えていることを新人からもらったフィードバックなどから感じました

フィードバックは、1ヶ月に1回程度、新人から研修リーダーに向けて書いてもらっています。フューチャーは一般の社員も360度評価を行っているので、その取り組みを新人研修に適用しています。

新人からのフィードバック

新人から研修リーダーへのフィードバックの一部

研修リーダーは、隔週の1on1や普段の生活のなかで、新人と精一杯コミュニケーションを取っています。それが新人の成長につながることはもちろんのこと、一方で新人からのフィードバックによって「◯◯と見えますよ」ということに気づき、自身のコミュニケーションを見直すことにつながります。「新人は研修リーダーをこう見ている」という、新人が研修リーダーの映し鏡になるという逆転現象が起きて、それが研修リーダー自身の経験学習につながります。

もうひとつが「メンターとの1on1」。私がメンターをしています。「赤坂さんが以前話していた通り」というのは、私との1on1での内容です。研修リーダーとは毎週30分ずつ1on1をしています。

彼らからはやはり、「いま新人研修を進めていて困っていること」の相談が多いです。それに対して、私の経験からできる直接的なアドバイスもしますが、実はそれ以外の話も結構多いのです。

それが「その問題は、経営陣からはどう見えるだろう?」「新人研修中じゃなくて、新人の10年後を考えたときに、どういう手を打つべきだろう?」「現場にいるときの自分だったらどう感じる?いまの感じ方とどう違う?」というように、主語や時間軸を変えながら、「その事象がどう見えるのか?」ということを問いかけます。

こういう問いかけを通して、研修リーダーには、いま目の前に起きている事象に対して、「いまの自分」で取り組むだけでなく、視座を上げながら向かい合ってもらうようにはたらきかけます。
その結果、新人研修が終わるころには、研修リーダー自身の口から「今まではこういうふうに仕事をしてきたけど、これからはこんなふうに仕事をしていきたい」という、未来志向のキャリアイメージが語られるようになります。

1on1_003_トリミング

研修リーダーとメンターで毎週1on1を実施

現場から研修リーダーという貴重な人材を「お借り」している私からすると、新人を成長させるのは最低限のミッションで、研修リーダー自身にも何かお土産をもたせて現場に「お返し」したいといつも思っています。以前は、人材育成にまつわるテクニックがそれにあたるのかなと思っていた時期もありました。しかしそれは、研修リーダー自身、ひいてはフューチャー全体から見るととても小さなお土産です。目先のスキルではなく、今後のキャリアを通じて考え続けるような、深い気付きの方が大切だと思うようになりました。新人はもちろんのこと、現場に戻る研修リーダーにも、ぜひ現場で活躍して、素敵なキャリアを築いていってほしいなと思います。

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いかがでしたでしょうか。

最初にお伝えした通り新人研修を「受けた」人は多いですが、「作った」経験のある人はそれほどいないと思います。新人研修に対する一般的なイメージは、「受けた」経験から形作られています。

一方、研修リーダーは、新人との第一線に立って新人研修を「作る」人。

そして私は、さらにもう一歩引いたから、新人研修を「作る」人。

こういう作り手からの目線も知ってもらうと、フューチャーの新人研修がより理解できると思います。

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赤坂


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