四肢障害をもつ私がフューチャーで20年勤めてこられた理由
HRグループの池内です。2001年に新卒入社し、様々なプロジェクトでシステム開発に携わってまいりました。この記事は、身体に障害をもっている私がフューチャーに入社した経緯や、周りの方々に支えていただきながら約20年働いてきた事例を書かせていただきます。
1. 自己紹介
私には脳原性運動機能障害(出生前後に脳の一部に傷がついたための後遺症)という先天性の身体障害があります。進行性ではありませんが、治る見込みもない障害です。両親は自分たちが年老いて私のサポートができない状況になってしまっても、自立して何とか生きていけるようにと考えて試行錯誤してくれました。そのおかげで、私自身は特に意識することなく、大学まで健常者と同じように過ごしてきました。
私の中学・高校時代は、まだタブレットどころかパソコンを使う授業などない時代でしたが、ワープロを持ち込むことを許可していただいて板書の内容を入力していました。小学2年生からワープロを使っていましたが、高校2年生の時に学校にパソコン教室ができ、マウスを初めて操作したとき、思い通りに動かすことが全く出来ませんでした。ちょうど進路について考えていた時期です。何とかこれを使うことができるようにならないと生活出来なくなってしまうと思ったことを今でも覚えています。同時にパソコンが使いこなせるようになれば、「私でも一般企業で働くことができるかもしれない」という微かな希望も持つことができました。大学で電気電子工学科を専攻した理由は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知識を学ぶことができるからです。プログラミングの授業はそれほど多くはありませんでしたが、ITスキルを身につけて技術者として生きていきたいと思うようになりました。
2. 身障者採用の現実とフューチャーとの出会い
大学3年になってはじめた就職活動はなかなか理想通りにはいきませんでした。私が就職活動をしている時期は、まだ就職氷河期と言われていたころではありましたが、理系学生は4年の夏までには活動を終えているのが通常でした。けれども、私は秋になっても活動を続けていました。
企業には法定割合の障害者を雇用する義務がありますが、健常者でさえ就職が厳しいのに、障害者の就職が容易なはずはありません。理解があって積極的に障害者を採用している会社であっても、できるだけ軽い障害で健常者と変わりなく動くことができる人を雇いたいと思うのは当然のことです。私の場合、不随意運動(筋肉の過緊張・硬直のために起こる意図しない身体の動き)がひどく、人前に出て緊張すればするほどその症状が顕著になり、発音にも影響が出てしまいます。そのため、働くどころか通常の生活さえ困難だと思われてしまうことも度々あり、就職の面接では大学での研究内容や志望動機さえ聞いてもらえないことも少なくありませんでした。そして残念ながら私のような四肢麻痺の人が実際に働いている事例を一度も聞くことはできませんでした。
もちろん採用につながらなかった原因として、私に障害をはねのける程のポテンシャルがなったことや、障害があることが「恥ずべきこと」であり、「人に頼ること」を何よりも嫌うという考えにも問題があったと思います。採用する側に求めるだけではなく、採用される側も自身を客観的に見て、自分は何がしたいか(できるか)、何ができないかを正確に伝え、障害の有無ではなく能力を正当に評価してもらえる努力を早い段階から続けることが大切だと思います。
「IT業界への就職」にこだわることをあきらめ、福祉関係の仕事を探し始めたころ、「プロップステーション」という障害者のIT技能による就労を支援し、企業との橋渡しをしている社会福祉法人の理事長をされている竹中ナミさんと出会いました。竹中さんには、業種にはこだわらないということを最初にお伝えしました。けれど、ここで諦めてどうすると発破をかけられ、私の希望が叶うかもしれないと紹介してくださったのが、プロップの理事をされていた金丸さん率いるフューチャーでした。
フューチャーの採用面接では、こちらがびっくりするくらい障害について問われることはありませんでした。もちろん竹中さんが事前にある程度会社に伝えてくださっていたおかげだとは思いますが、それまでの面接とは明らかに異なり、私も比較的落ち着いて話ができ、内定をいただくことができました。
2001年入社当時、本社があった渋谷オフィスにて(右から3人目)。
3. フューチャーに入社してから
2001年4月に入社し、先輩社員や同期の方々とふれあい、切磋琢磨しながら3か月間の新人研修を受ける中で、私はフューチャーに入社できてよかったと心の底から思いました。健常者ばかりの集団に新たに所属する際には、溶け込めるだろうかと不安に思うのですが、フューチャーではその心配は無用でした。男女の区別なく働けるのと同じような感じで、全てのことにおいて障害者であることが原因で恐縮してしまうことはほぼありませんでした。
新人研修を終え、プロジェクトに配属されてからも、それは変わりませんでした。就職と同時に上京し初めての一人暮らしへの不安さえも吹き飛ぶほど仕事に熱中し、楽しく有意義なフューチャーライフを送ることができていました。フューチャーには、フラットで多様性を許容しながらも、個々の能力を正当に評価する(どんな理由であれ、特別扱いしない)カルチャーがあります。勤続年数や、男女の違い、年齢などの理由で評価が左右されることは一切ありません。それと同じように障害があっても能力をきちんと評価され、可能な範囲で仕事を任せてもらえます。
現在の部署に異動するまでの直近7年ほどは、あるシステムの保守プロジェクトに所属していました。いつしかプロジェクト内で古株になり、新規参画者に対してシステムの技術的な概要や開発業務の進め方を説明する役割を任せていただくようになりました。
その際、私が懸念していたことは、新たな環境に期待で胸を躍らせているであろう新規参画者にとって、今後の業務の説明をするのが私では、不安に思うのではないかということでした。そして上司と雑談していた際に「この役割を任せてもらえることは嬉しいけれど、相手がかわいそうな気がする。」と話してみました。すると上司は、私をその役割から外すことではなく、私が相手と最初に顔を合わせる時に必ず「池内は、入社何年目だっけ?」と冗談ぽく聞いてくれるようになりました。そのプロジェクトには私のように勤続年数が10年を超える社員がいなかったので、年次をあえて話題にすることで、見た目は頼りないけどフューチャーでそれなりに経験を積んできたことを伝えて、相手の不安を取り除こうとしてくださいました。私にとっては、その一言がとてもありがたく、その後も不安なく業務を続けることができました。
「してもらう」「してあげる」ではなく、一個人として常に対等な関係がフューチャーにはあります。しかし時には、どうしても不可能なことは正直に言わなければなりません。自分にとってもプロジェクトにとっても無理をしていいことなどひとつもありません。できないと口にしてしまうのは悔しいこともありますが、正直に伝えることで周りも理解してくれ、次の仕事にも繋がります。そして「正直に言える雰囲気」があるということも、私が長く勤めることができている要因の一つです。
4. 状況の変化に応じたフレキシブルな働き方
前述のとおり、進行性ではない障害ではありますが、体力の衰えは人より早く始まってしまいます。ここ数年、通勤時に倒れてけがをしたり、土日だけでは体力を回復できないまま次の週が始まってしまうことが多くなりました。やりがいのある仕事をもっとやりたいと思う反面、体が思うように動いてくれないという状況になって、退職することを考えました。なぜなら、入社前に「体力はあります。人よりちょっと時間がかかってしまうかもしれませんが、必ずやり遂げます。」と約束したからです。プロジェクトに所属する以上、システムトラブルなど予期せぬ事態に対応しなければなりません。自分がどんな状態であれ、お客様が困っている際には全力で対応する。対応できる自信がなくなってしまったらフューチャーのコンサルタントとしては失格です。
退職も選択肢の一つとしたうえで、今後の働き方について人事に相談しました。しかし、人事から返ってきた答えは単純明快そのものでした。
「状況が変わったら、その状況に合わせた働き方をすればいい」
フューチャーで仕事をしてきて会社に対して不満は何もないどころか、働きやすい環境の配慮をしていただいており、それ以上のことを望むことは贅沢で我儘すぎると考えていた私にとって、正直驚きでした。人事との面談から2か月も経たないうちに配属されたのは、社内で使用するシステムを構築するチームで、働き方も大きく変わりました。
私のように、個人的な理由でワークスタイルを変えたいと思った時、状況に応じて働き方を相談でき、すぐに実現してもらえる会社は稀ではないかなと思います。以前から、ラッシュの時間を避けて通勤するなど、できる限りの考慮をしていただいておりましたが、現在はその日の体調により「仕事には支障がないけれど通勤が不安だ」という日は当日にテレワークに変更することも可能となり、よりフレキシブルな働き方をさせていただいています。また昨今は新型コロナウイルスの影響により、出来る限りテレワークをしましょうという方針になりました。身体障害を持つ者にとってはとてもありがたい変化です。子育てや介護が理由でない限り、少し肩身が狭く思っていたテレワークが、フューチャーでは既に「普通のこと」になっています。
自宅でのテレワーク風景
5. おわりに
今回この記事を書かせていただくにあたり、就職活動の記録を読み返し、また入社した当時のことを思い出しました。そして、改めてフューチャーに入社できて良かったと思いました。
先天性の身体障害者が一般企業の総合職で就職することが容易ではない状況は、20年経ってもあまり改善されていません。私と同じ境遇で就職を希望されている方に、この記事が少しでも参考になれば嬉しく思います。
「周りと同じ動きをしてはダメ、常に時代の先端を走る」というフューチャーの考え方においては、「障害者採用」という枠ではありますが、それは採用方法の一つでしかなく、特別なことは何もありません。働く意欲があり、目標に向かって努力を続けられる人であれば、活躍できる環境がフューチャーには整っています。
2001年入社同期とのオンライン飲み会。20年経っても変わらぬ仲間たち。