MBA通信 From シンガポール ~2学期終了~
※この記事は、2021年3月28日に全社宛に共有されたレポートです。
MBAの学生としてNanyang Technological University(NTU)に留学中の柳原です。
プログラムが開始して早9ヵ月が経過し、2学期目が終了しました。3学期目(4月~8月)は早稲田大学のMBAに通うので、シンガポール生活も終わり日本に帰国しています。2学期後半は非常に忙しく、9時から22時まで授業に出席し、その後プレゼン資料を作成したりケースを読む必要があったりと、フューチャーの仕事より忙しい日もありました。
今回は、2学期目から始まった科目についてご紹介したいと思います。
Supply Chain Managementの最後の授業でクラスメイトと
1.Strategic Management
MBAと聞いて真っ先に思い浮かぶクラスがこの授業かと思います。外部分析・内部分析・企業戦略・ビジネス戦略・アライアンス戦略・M&A戦略など戦略立案を一通り行うための基礎を学ぶクラスです。
テーマに則したケースを事前に読み、講義で理論を学んだ後、その理論を活用してケースのディスカッションを行うというのが大まかな授業スタイルです。このクラスでは、分析するときの観点や、戦略を立案するときの懸念点などを学ぶことができます。
最終課題はプレゼンと3000字以内のレポートが求められます。プレゼンでは、ケースと最新情報をもとに、ケースで取り上げられた企業 (今回はGarmin)に対して、企業価値向上に向けて今後のとるべき戦略を4人1チームで提案しました。レポートは上場企業から1社選択し、現在の戦略についての分析・批評・リスク・提案などを記載することが求められました。最終課題で今まで学んだことをひとつの企業に当てはめることで、各分析・戦略の関連性を理解することができ、個人的には好きな科目のひとつでした。
2.Negotiation
交渉時に、互いにwin-winの関係を構築するにはどのような考えをもつべきか示唆を与えるクラスです。
このクラスの面白いところは、事前に自分の役割が記載されたペーパーが渡され、役割が異なる相手と実際に交渉をすることです。例えば、「私はプロジェクトマネージャーで予算と期限が与えられていて、良いソリューションを開発したいが、予算も期限もオーバーすることが現状判明している。その状況下で、最も有力候補であるITベンダーと開発予算・期間について交渉する」というような設定です。実際に交渉すると、クラスメイトの国ごとの特徴が表れたので、非常に有意義なクラスでした。
最終課題は全7回実施した交渉結果に対する自身の分析・洞察の記載が求められました。こちらも個人的には好きな科目のひとつでした。
3.Corporate Governance & Ethics
クラス名に「Corporate Governance」と入っていますが、主にEthicsに焦点をあてたクラスです。
例えば、Child laborに関するディスカッションや自身がマスクを売っている店を経営している中、ウィルスの蔓延でマスクの供給が難しくなった際、自身はマスクの値段を上げるかなどです。個人的にはAI倫理などの話を聞きたかったのですが、その話題は取り上げられなかったのが残念でした。
最終課題は不祥事を起こした企業を取り上げ、不祥事後の対策を発表するプレゼンと、他チームのプレゼンに対する批判および新たな提案をレポートで提出することが求められました。
4.Life Sciences & Bootcamp
バイオメディカル・ヘルスケア業界に特化したクラス(選択、早稲田ダブルディグリー生は必須)です。
なぜ早稲田ダブルディグリー生は必須なのか不明でしたが、教授曰く、特に特別な理由はないらしいです。ただ、この教授は現在もヘルスケア業界で会社を経営しているため、業界に関する造詣は非常に深く、当初は興味がなかった私でしたが、好きな科目のひとつになりました。
このクラスは金土日の3日間、フルタイムで行われたクラスで、最終日はケースをもとに、ケースで取り上げられた企業の今後の戦略を提案するプレゼンを求められました。この3日間は特別ハードな日々となりました。
5.Crisis Scenarios & Contingencies
自然災害・ヒューマンエラー・環境変化などに関する危機管理をどのようにするべきか学ぶクラスです。
楽観主義の私にとって危機管理を考えることが苦手だったので受講しました。危機管理に関するフレームワークもあり、検討するべき観点を学べたのは良かったのですが、取り扱われるケースが政府系のケースが多かったのが少し残念でした。私たちのチームは9・11のテロに関するケースで、当時のアルカイダ・CIA・FBI組織構造が40ページにわたって記載されていました。
このクラスのユニークな点は最終課題です。6人1チームで、与えられたケースをもとに3時間の講義を運営する必要がありました。そのため、以下のような大まかな流れで講義を運営しました。
①ケースの概要をプレゼン
②教授が用意したお題をもとにクラスディスカッション(チームメイトがディスカッションを回す)
③お題に沿った最終的な結論をチームがプレゼン
④教授の総括
全5チームあったので、最後の5週間は実質クラスメイトが講義を運営していました。教授は楽をし過ぎでは?と思いましたが、いつもとは違う経験ができたことや、クラスメイトが運営していることで普段より集中力が増したので、これはこれで良い運営方法だなと思いました。
6.Behavioral Science
人の思考はどのような傾向があるのか、その傾向への対策はどうするべきかなど学ぶ心理学のようなクラスです。
人の思考はある一定の傾向があり、それを理解することで、より冷静に客観的に物事が判断できるのだとこのクラスを通じて理解しました。例えば、少ないサンプルから一般化してしまう、ネガティブな話題に強く反応する、損することに強く毛嫌いする、すでにお金や労力や時間を支払ってしまったという理由だけで損な取引に手を出し続けてしまうなどがあります。これらを理解することで、自身がどのパターンに陥っているのかわかり、一度立ち止まって冷静に考えることができると思いました。
7.Organisational Strategy of Japanese Companies in Asia
「7」と「8」のコースは早稲田が提供するコースで早稲田MBA生とオンラインで一緒に受けたコースになります。こちらは、日本企業がアジアにビジネスを拡大する際の組織に関するポイントを学ぶクラスです。
シンガポールの歴史やアジアの文化を理解しつつ、実際にアジアにビジネス展開をしている企業の人事の方を招いて、現状のビジネス戦略や抱えている人事の課題などの話を伺いました。
最終課題はチームプレゼンで、話を聞いた人事の方が現状抱えている課題に対する提案を求められました。アジア(特に中国・シンガポール)は、給料を上げるために90%の人が3年以内に会社を辞める傾向があるとNTUのクラスメイトから聞いており、実際、人事の方も離職率をいかに下げるかに苦戦しているようでした。そのため、そういった現状も考慮しつつシンガポールビジネスを考える必要があると感じました。
8.Neurocience of Leadership
リーダーシップを脳科学から観点からアプローチしたクラスです。
このクラスは今年度から提供されたコースで、試行錯誤している感は否めませんでした。例えば、クラスの前半は脳の構造や機能をメディカル英語で話すので、非常に難解でかつビジネスでどう活かすのかなかなか理解しずらかったです。しかし、興味深かった点として、その人がリーダーシップがあるかどうかは脳を見ることである程度わかるという話があり、採用時に適応するのも面白いなと思いました。(個人情報とかいろいろな問題はありそうですが)
他にも、社員のストレスチェックをする際、ストレスチェックテストをそのまますると、従業員はいろいろと考慮して、過度なストレスがかかっていないように回答をする傾向があるため、それを防ぐために、脳テストをして間接的にストレスチェックを図る方法もあるようで、これも興味深い話でした。
最終課題はプレゼンとレポートでした。プレゼンは、ある人の行動が記載されたケースが渡され、その行動をもとにその人はどのような傾向にあるか脳科学の観点から検討し、改善点を提案するユニークなお題でした。レポートはこの授業を通じてどのような影響を自身に与え、今後どのように活かしていくのかを1000字以内で記載することが求められました。
シンガポールでの授業が終わって
NTUに通って驚いたことは、学部生を含む彼らの勤勉欲です。授業では、積極的に教授に質問をし、図書館に行けば日中は常にほぼ満席状態でした。このような勤勉欲に加え、シンガポール人は英語と中国語が堪能。そのため、中国・インド・他の英語圏の国々と難なくコミュニケーションが可能でした。(シンガポールに住んでいるインド人は、小学生の時に中国語を第2言語として選択する傾向が多いようで、彼らはヒンディー語・英語・中国語が話せる)
日本は過去の功績(高度経済成長期の著しい経済発展やビジネスモデル)から、アジアの国々は日本を見習う傾向が今のところまだありますが、将来はこの構造も変わってしまうのでないかと思います。そのため、個人的には、今までしてきたように常に知識をインプットし、ビジネスの場でアウトプットすることを繰り返して成長させていく必要があると更に強く感じました。
4月からは早稲田大学のビジネススクールに通うので、早稲田の教授や生徒とディスカッションを通じて更に知識を深めていきたいと思います。
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