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フューチャーで試掘する本質的なコミュニケーション術「地層型朝会」

こんにちは、TIG/EXU(Energy Transformation Unit)の松本野歩(まつもとのぶ)です。

今回は、エネルギー業界(石油ガス探査・開発)のクライアント向けコンサルティングプロジェクトで試行した「本質的なコミュニケーション術」について、同業界特有の用語を用いて、面白おかしくご紹介したいと思います。

コミュニケーション術について書くことになったきっかけは、現在担当するプロジェクトのクライアントにぜひ記事にしてほしいといわれたことです。このクライアントは、エネルギー業界のガス石油探査開発領域ではパイオニア的存在で、高度な技術をもっておられる企業ですが、昨今のDXでビジネスモデルの転換に対応される中で、新たなコミュニケーションの取り方についても模索されていました。打ち合わせのタイミングで、今回の記事内容についてお話したところ、本質的な話だと記事化のご要望をいただきました。

ということで、今回の記事は、エネルギー業界特有の用語を用いていますが、内容は業種業界・組織形態・役職問わず、より本質的なコミュニケーションの取り方はないか?と模索している方にとって、より本質的かつ具体的なTipsとなるものです。


■そもそもコミュニケーションとは

プロジェクトで仕事をするためには、メンバー間のコミュニケーションが必須です。コミュニケーションでは言葉の理解が重要になりますが、言葉を受け取るメンバーにとって、言葉の形式的な意味は理解できても、その本質的な意味や、暗黙知的な部分までは、なかなか理解できないものです。

例えば「データ」と言っても、紙素材に記された情報は含むのか?「我々」と言っても、クライアントを含めるのか?もう少し深いところでは、「効率化」は今回のプロジェクトにおいては、肯定的な意味合いなのか?など。

メンバーは人間なので、プログラム言語と違い、価値観や背景の違いによって、言葉の定義や境界が異なるのは当然のことです

しかしながら、プロジェクトで、重層的かつ本質的な成果を出すためには、各メンバーの行動やアウトプットの基底となる「暗黙知」部分を可能な限りメンバー間で共有することが必要となってきますコミュニケーションはその手段であり、そのために私が試行したコミュニケーション術の一つが「地層型の朝会」です

■地層型の朝会とは

そもそも一般的な朝会は、オンライン顔出しで時間が30分、一人当たり5分程度で以下を事前に記入して、更新部分を発表することが多いのではないかと思います。

  • 予定と実績

  • 達成率

  • 課題

  • 共有

  • ぷちプライベート発信

一見、効率的に見えますが、足りない点もあります。私が感じたのは、「短い言葉やテキストでは、ヌメットした部分(暗黙知的なもの)をお互い伝えきれない気がする。つまり、皆の行動や発言の背景が見えない」といったものです。

自身を含めたメンバーの意見を相対化できない。メンバーの思考と行動の関係性やその背景が見えてこない。

その状態ではクライアント企業の全社戦略や多くの人達の未来にも影響していきます。コンサルティングプロジェクトでは、現状の分析までは形式知だけで対応できたとしても、その先どんな方針で、施策やロードマップを作成するのかまでメンバー間で暗黙知が共有されていないと、無駄なアウトプットが量産されるなどの、躓きがでてきます

そこで、もう少しヌメッとしたウエット感のある朝会を試掘(試行)してみようと考えました。それが「地層型朝会」です。

■地層型朝会の実施方法

場の特長としては、参加する上での心理的ハードルの低さと、内容の深さ(暗黙知)という一見相反する要素を両立できるように工夫しています。

時間は時と場合で設定していますが、1~2時間。特に司会は定めていませんが、私がおもむろに話し出すことが多いです。そのうちメンバーもどんどん重なって話し出します。なかなか面白い光景です。

具体的な、地層型朝会のトピック例と参加メンバーへの周知文例はこんな感じです。

地層型朝会のトピック例

  • 雑談(20分程度)
    例:北海道石のニュース、地政学、本や映画、最近みた変な夢

  • プロジェクト外の会社や同業界の話(20分程度)
    例:ネットワーキング作り、新規事業のアイデア、他社動向、社員紹介

  • 仕事の話(10分程度)
    例:プロジェクトのスケジュール、タスク、アウトプットイメージ
    例:クライアント企業の経営や人に対する考察、我々のスタンス確認

  • 連絡事項(5分程度)

メンバーへの事前周知文例

  • この朝会は、心理的安全性や暗黙知(非形式知)を縄文文明並みに高めるため、雑談&長時間形式を採っています。

  • そのため、ラジオ感覚で聴くのもOKです。

  • 他のミーティングや作業に入りたい人は、遠慮なく抜けてください。

  • この議事メモは明日以降の朝会にも使い回すので、話したいことや思いついたことがあれば一番上の部分に自由に追記をしてください。

  • 急ぎの連絡事項がある人は誰宛のメッセージか分かるようにして、その内容も記入しておいてください。

で、結局なにが地層型なのか?

地層型コミュニケーションのイメージ

やや強引かもしれませんが、上記イメージの様に、朝会のメモは過去日も含めて複数日を一枚のメモに連続的に蓄積する方式をとります。そのため、文字通り時間の地層となっており、特定のメンバーが朝会に参加できていない日も置き去りになりません。また、朝会のトピック(議題)についても、昨日メンバーが見た変な夢の話から地政学まで複数の層で構成されています。地層それぞれに、メンバーのパーソナリティやスキルによって組成される様々な意見や思考過程が堆積されていきます。

このような朝会を毎日繰り返すことで、メンバーの様々な意見や思考が堆積し、相対化され、心理的安全性の向上や暗黙知の醸成、獲得が自然と行われるようになる。結果、良いアウトプットやアイデア、組織内外のネットワーキングと言った資源・鉱物(成果)が採掘される可能性が高まるという塩梅です。

少し表現を変えてみると、他人が何を考え、どんなフィロソフィーを持っているのか。摩擦を恐れず、系譜学的に受け入れる。その手段として、仕事だけではない視点からそれらを推し量り、皆が面白がることができるような世界線を探る。また、その過程を通してコミュニケーション力も強化する、という感じでしょうか。また、ともすればリモートにより失われたコミュニケーションの本質的な部分をとりもどすことになるのかもしれません。

地層型コミュニケーション術をより効果的にするTips

今回は、地層型のコミュニュケーション術の一例として朝会をご紹介しましたが、他にも併せて活用することで効果が高くなると思われるTipsを列挙しておきます。

  • 16personalitilesなどのパーソナリティ診断でメンバーがお互いを知ろうとするきっかけをつくることで、お互いのコミュニケーションの準備運動にする。

  • アウトプット作成では共同編集できるもの、俯瞰できるツールを用い、プロセスがそのままアウトプットになる様に計画する。

■地層型コミュニケーションの成果

2023年の年初から半年間程度、地層型コミュニケーションを試掘(試行)してどんな成果があったのか?思い出せる範囲で以下に列挙します。

地層型コミュニケーションの試掘結果例

  • コンサルティング最終報告のキラーコンテンツが生まれた

  • 自動生成AIを使った、業務効率化Tipsが増えた

  • 新しいコンサルティングメニューアイデアが生まれた

  • みんなが楽しそうに仕事をするようになった

  • クライアント含めたメンバ間の会食や仕事外の会話が増えた

  • 異業種交流コミュニティが爆誕した

  • 新たな営業施策のアイデアが生まれて実行され結果がでた

  • 新規事業のアイデアが生まれた

  • 社外の面白い人物との出会い(紹介)が増えた

  • やりたい仕事(案件)が向こうからやってくる様になった

  • 採用人数が増えた

  • 対面(社内外)MTG時のドギマギ感がない

  • 地質関連の人へのお土産に適したジオ菓子の発見

成果がたくさんありすぎて、全て紹介しきれないのですが、面白いものについては、また別の物語として紹介したいと思います。

■未来の組織像「縄文型組織」

最後に、私が志向する未来の組織像について少しだけ触れてみたいと思います。それは、「縄文型組織」です。

縄文時代というのは、実は1万年以上続いて、弥生時代から現代の間、約2300年よりも長く、時代的にはメソポタミア文明より古いという説もあるらしいのです。その持続可能性にあやかって「縄文型組織」と勝手に称しています

働き方改革や、昨今のWeb3、DAOに代表される様に、一つの組織のみに属する時代は遠くない未来に終焉を迎えると予想しています。その未来からバックキャストすると、「従来型組織」と比較して以下のような特長を持つ「縄文型組織」がやがて主流になっていくのではないかと考えます。

「従来型組織」と「縄文型組織」の比較イメージ

  • 中央集権型 → 分散型

  • 形式知重視 → 暗黙知も重視

  • 権力    < 権威

  • 管理職偏重 → 管理職も1ファンクション

  • 競争    → 共創

  • 焼畑農業型 → 循環型/採集型

このような組織では、今回紹介した様なコミュニケーション術が、より重要になってくるはずです。「縄文型組織」の試掘が終わったら、また紹介します。

■エネルギー×テクノロジーで日本を元気にするEXU

現在私が所属するTechnology Innovation Group内のEXU(Energy Transformation Unit)は2022年夏に結成しました。エネルギー×テクノロジーで日本を元気にしたい仲間達と組成したユニットで、エネルギー業界のクライアント企業向けに、事業戦略、フィールド、テクノロジーを連携させたコンサルティングサービスを提供しています。

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