スタンフォード通信vol.1~現在のシリコンバレーの様子とテック界隈の動き
こんにちは。スタンフォード大学に客員研究員として赴任中の西原です。
フューチャーでは毎年1名がスタンフォード大学に客員研究員として派遣されており、私は昨年9月よりここアメリカで最先端のビジネスやITについて研究する日々を送っています。
私が住んでいるシリコンバレーでは外出禁止令が出て2週間が経ちましたが、家族含めて元気にやっています。
今回は昨今の状況を鑑み、3月27日に社内向けに送ったレポートから、シリコンバレーのリアルな現状をお届けします!
1.アメリカでのコロナウイルス対応
CDC(米国疫病予防管理センター)の3/27時点での発表では、全米での感染者85,356人、約1/3の州で外出禁止令が出ている状況です。
特にアメリカ最大都市ニューヨーク州での感染拡大が続いており、全米感染者の半分弱と、3月頭に感染が確認されてから急激に増加しています。
CDC(米国疫病予防管理センター)Webサイトより
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/cases-updates/cases-in-us.html
2月は中国や日本での対応がニュースで流れてくる程度でしたが、3月に入ってから状況が変わり、政府は矢継ぎ早に対応を行っています。
3/13に国家非常事態宣言をトランプ大統領が宣言した時には、政府関係者以外に、Googleや、Walmart、Target、Walgreensといった小売企業の経営幹部も立ち合い、官民一体となって立ち向かう!という姿勢を示しました。
3/27には大型景気対策法案が議会を通過して、大統領の署名が実行されました。
家計への現金給付や失業保険、打撃を受けた業界・中小企業・医療機関支援といった内容なのですが、規模が2.2兆ドルとアメリカGDPの約10%となります。
※アメリカでの戦争時の軍事費(第2次世界大戦以降)がGDPの10-15%
2.シリコンバレーはどんな状況か
私が住んでいるベイエリア(シリコンバレー+サンフランシスコ)では、全米で最初に外出禁止令が実施されました。
Shelter in place(自宅避難)という方針で、生活に必要な外出以外は禁止、食料品の買物や個人での運動は許可されていますが、外出時はSocial Distancing(人との接触を避け、接近する場合も1.8m以上)を保つ、というものです。
2週間が経ちましたが、必要な日用品・食料は手に入り、大きな混乱も無い状況です。
スーパーマーケット「Trader Joe's」に並ぶ人々
◇公共交通機関、医療機関、銀行、ガソリンスタンド、警察、消防等
・必要な政府機関はオープン
◇Stanfordを始めとする大学の授業・セミナー
・オンラインに移行、学校は休校(地域によってはオンライン授業)
◇公園
・オープン(一部クローズ)
・Social Distancingを保ちながらのウォーキングやランニング、犬の散歩をしている人はそれなりに見かける
◇レストラン
・テイクアウト・デリバリーのみ
・フードデリバリー大手のGrubhubやDoor Dash、Uber Eatsでは、配送料無料やレストランへの手数料を無料化
・非接触デリバリー(ドアの外やアパートメントロビーに置いてもらう)
◇スーパー、ドラッグストア、ホームセンター
・オープン
・百貨店やショッピングモール、アパレルはクローズ
・一部スーパーでは、入口で店員による流量制御を実施
・営業時間の短縮や一部日用品の在庫不足はあるが、定期的に入荷
・WalmartはWebから各店舗での在庫有無が確認可能
・EC利用が急増、配送の一部遅延はあるが通常通りのサービス
・自宅のAmazon Lockerが、今週からQRコードを使った非接触での荷物受け取りに対応。
・Amazonが10万人、Walmartは15万人の従業員雇用を発表
・ガンショップの売上が増加(非常事態に備える行動とのこと。。)
◇ライドシェア(Uber/Lyft)
サービス提供しているが、街に人がいないので利用者は激減
3.テックジャイアント・スタートアップの動き
最近のテックジャイアントは、プライバシー問題等で社会の風当たりが強かった印象ですが、コロナ対応では各社オンラインでのスクリーニングツールを提供したり、従業員・ユーザ向けの経済支援を発表したりと、存在感を示しています。
一部のスタートアップではレイオフや廃業するところも出てきていますが、コロナ対応によって発生したペインポイントを解決することで成長を加速させるスタートアップも出てきています。
シリコンバレーは、古くはブラックマンデー、ドットコムバブル、リーマンショックを乗り越えてきた経験が強みであり、VC(ベンチャーキャピタル)からはスタートアップ向けガイダンスが早いタイミングで提供されていました。
◇Google
・Alphabet子会社のVerilyが、オンライン・スクリーニングサービスを提供
オンライン・スクリーニング → 検査が必要な人は予約
→ ドライブスルー検査、という流れ。
https://youtu.be/y54PJNfEy54
・休校となった一部学校では、Google Classroomを利用したオンライン教育を実施
◇Amazon
・研究者がバイオインフォマティクス、分子モデリングを高速に実行できるようにするために、米国立研究機関やIBM、Google、Microsoftと提携して、COVID-19ハイパフォーマンスコンピューティングコンソーシアムを立ち上げ
・自宅検査用キットの配布・回収を行う研究プロジェクトをシアトルで開始
・Alexaを使ったスクリーニングツールを提供
◇Apple
・CDC (米国疫病予防管理センター) と協力して、Siriを使ったスクリーニングツールを提供
◇Facebook
・インド政府と協力して、ヘルプデスク・チャットボットを提供
・Google、Microsoftと協力して、フェイクニュース根絶に向けた取り組みを開始
◇Microsoft
・CDCと協力して、オンライン診断のチャットボットを提供
・ビルゲイツ(取締役を先日退任)が、Redditに降臨したと話題に
◇Airbnb
・世界の医療従事者10万人向けに無料で宿泊先を提供
◇Moderna Therapeutics
・NIH(米国立衛生研究所)と今月実施した試験で、新型コロナウイルスワクチン候補を最初の患者に投与。2か月後に結果が判明予定
◇Run The World
・オンラインイベントのプラットフォーム。
・ライブ中継でのユーザ参加型イベントの実施、イベント企画からイベント後のコミュニティ運営等、オフラインで提供されていた体験をデジタル化。
4.日々の生活
外出自粛令で何ができて何ができないのか等、情報を収集して適応していくのはなかなか大変ですが、非常事態のアメリカで、政府・企業がどんな意思決定をして行動するのかを、リアルタイムで見れるのは貴重な経験だと思っています。
Stanford APARC(アジア太平洋研究センター)の職員・研究員同期とは、定期的にオンライン・ミーティングをやっています。
次は、Zoom Happy Hour!(オンライン飲み会)をやってみる予定です。
私はスタンフォードでの研究と並行して、シリコンバレーでの事業立ち上げを検討しているのですが、事業計画といったまとまった時間が必要な仕事に取り組んでいます!
また家族との時間も増え、シリコンバレーは自然が豊富なこともあり、ハイキングをしたり、子供たちと縄跳びやボール遊びをしたり等、健康的な生活を送っています。
家の近所で子供たちとの癒しのひと時
今回は以上となりますが、また現地のリアルな情報をお届けしていく予定です。
日本も予断を許さない状況だと思いますが、みなさまお気を付けください。