MBA通信 From シンガポール ~隔離とファイナンス授業の様子~
こんにちは。MBA学生としてNanyang Technologial University(以下、NTU)に留学中の柳原です。
授業が開始して約1か月半が経ち、当初は日本でオンライン講義受けていましたが、現在はシンガポールの寮で講義を受けています。(一部のクラスメイトはシンガポールに来れないので、10月まではオンライン講義がベース。)
今後、定期的にシンガポールの状況や講義の内容などを共有していこうと思います。
1.MBA留学の経緯
シンガポールの様子をお伝えする前に、そもそもMBA留学に至る経緯をお話しようと思います。MBA留学を考え始めたのは2017年8月ごろに遡ります。当時の私は将来のキャリアをどのように形成するか考えておりました。キャリアを考える上で、大手企業のクライアントがITコンサルタントに将来どのような能力を求めるかが重要だと考え、過去から現在に至るまでの主なIT戦略を振り返ってみたうえで、これから求められるIT戦略とは何かを考えることにしました。
これまでIT戦略に求められていることは、ITを活用して企業のITコストや業務コストを削減することでした。それらを実現した後、クライアントが求めるものは何か、、、?
それは、売り上げ拡大につながるIT戦略。つまり、より攻めのIT投資です。ある調査によると、現在の日本企業はIT投資額の8割は守りのIT投資(運用保守・コスト削減のIT投資)であると言われています。10年後を見据えると、この割合が減少し、攻めのIT投資の割合が上昇していくと考えました。
その場合、クライアントはITコンサルタントに対して、ITを活用した新規ビジネスを考えて欲しいと要望するのでは?と考えたのです。この状況下で必要なスキルは、「IT×ビジネス(※)」です。当時の私はシステム構築はある程度経験していたためITには精通していましたが、経営観点でのビジネス知識は乏しい状態でした。ビジネス知識を身に付けるために包括的に学べるMBAを思い付き、MBA留学を志しました。
※ここでのビジネスとは、事業を運営するために必要な考え方(経営・会計・財務・マーケティング・人事戦略など)を指します。
2.なぜ海外のNTUを目指したのか
当時の私は純ジャパと呼ばれる部類でして、全く英語が話せない状態でした。そんな私がMBA留学でNTUを選択した理由は主に4点あります。
①IT系科目に力をいれている
②さらなる発展が期待できるアジア経済下にあるアジアの大学
③世界ランキングで比較的上位に属している
④日本のビジネスも学べる
この条件で大学を吟味した結果、NTUがベストでした。NTUは理系の大学ではアジアトップと認識されており、IT系の科目も多く提供しております。更に、NTUは早稲田と提携し、Nanyang-Wasedaダブルディグリープログラムを提供しています。約9か月NTU、約5か月早稲田に通うことで両大学からMBAの修士号がもらえます。まさに私の条件に合致する大学だったので、2017年8月当時から第1志望でMBA留学準備を進めておりました。約2年半の準備を経て、運よく第1志望のNTUに合格することができました。
3.シンガポールでの隔離中の様子
さてここからは、シンガポール渡航後のお話です。9月2日から9月16日までシンガポール政府指定のホテルに滞在しておりました。隔離の経験はレアだと思いますので、実際の様子を共有したいと思います。
3-1.成田空港の様子
今回は成田空港からシンガポール航空を利用しました。ご覧の通り、空港内は閑散として状態で、スタッフの人数のほうが多いのではないかと疑うくらい乗客は少ない状況でした。飛行機搭乗時には、マスクや消毒液が各時に配布され、席は1列に3、4人のみとし、十分距離を確保できるように対策されていました。
閑散とした成田空港
3-2.シンガポール到着後
シンガポール到着後は、そのままバスに乗せられ、ホテルへ移動します。ホテルは比較的綺麗で、運が良いと5つ星ホテルに滞在できますが、指定はできず、シンガポール政府が任意でホテルを割り当てます。
私が滞在したホテル(↓)はビジネスホテルのようなホテルでした。
私のクラスメイトが滞在したホテル(↓)は結構豪華で、みんなに自慢してました。
3-3.隔離中の食事
隔離中の食事は、ホテル滞在初日にChinese, Halal(イスラム法で許された料理), Indian(ベジタリアン用), Indianから選ぶことができ、私はChineseを選択し、辛い料理はなしと伝えました。隔離中は朝・昼・晩決まった時間に料理が運ばれてきます。驚いたことにメニューが毎回変わるので、全く飽きることなく隔離期間を終えることができました。
1食分の食事
3-4.隔離中の監視状況
隔離に入り、シンガポールの電話番号を入手したら、「Homer Monitoring」というアプリをダウンロードし、GPSを常に通知することが義務付けられます。そして、1日3回体温や体の状態、顔写真の提出が求められます。
「Homer Monitoring」のトップ画面。
「Submit Report」ボタンを押すと、顔写真を撮ってと要求されます。
顔写真撮影後、体温や体の状態を入力し提出します。シンガポールではアプリを活用して、徹底的に監視しています。
3-5.隔離中のPCR検査
隔離されて数日が経過すると政府からSMSが送信され、PCR検査日と場所が指定されます。PCR検査日に初めて、シンガポールの外気に触れることができ、到着後初めて「やっぱりシンガポールは暑いな」って思いました。
PCR検査後、2日後以内に結果結果がSMSで届きます。PCR検査が陰性でかつ14日間の隔離を終えることで自由の身となります。現在は寮に滞在しているので、大学の様子は次回お伝えしたいと思います。
4.ファイナンスの講義
9月上旬までファイナンスの講義を受けていたので、実際のMBAはどのような感じなのか共有したいと思います。
4-1.講義の感想
まず始めにファイナンスの講義を受けて思ったことは、将来経営者や経営に携わりたいと考えている方は絶対に学んだ方が良いということです。フューチャーの新卒は簿記2級の取得が必須ですが、経営者や経営に関わることを目指している方々は会計のみの知識では不十分です。
会計の知識だけだと、利益が最重要指標で負債(借入金や社債など) は悪だと考えがちですが、 ファイナンスを学ぶことで、利益よりもキャッシュの方が時には重要であること、 借入金や社債を全く活用しないことも問題であることが理解できます。その結果、ビジネスモデルを検討する際の考え方が変わってきます。
4-2.授業の様子
NTUのビジネススクールは全ての科目においてチーム制が敷かれています。これは実際のビジネスの場でもチームで仕事をするためです。また、国籍・性別・経歴に偏りがないようにチームメンバーが割り当てられます。ファイナンスの授業では、10人1チームで構成されており、私のチームはインド人2人・シンガポール人1人・マレーシア人1人・中国人4人・韓国人1人・日本人1人(私)のメンバーでした。
授業では、基本的にアウトプットすることに重きを置いています。例えば、最近のコロナの状況で下記3社の航空会社が各々の手段で資金調達をしたことを題材に、なぜその手段を活用したのかグループ内で議論して、その後パワーポイントで資料を作成し、クラスで発表するという進め方です。
・シンガポール航空
株式割当増資・転換社債型新株予約権付社債
・キャセイパシフィック航空
株式割当増資・ 優先株・ブリッジローン
・カンタス航空
長期借入・Institutional placement・Share purchase plan
元々純ジャパで英語に不慣れな私は、どのクラスメイトよりも念入りに事前準備を行いました。議論のお題や、資料作成の有り無しは事前に共有されるので、授業開始前に自分の考えをパワポ化し、チームメンバーに事前に共有。グループディスカッションが開始したら画面共有をして、自分の資料をベースに議論するような進め方をしていました。こうすることで、自分の考えをわざわざ話す必要もなく正確に伝えられるので、有効的な方法だったと思っています。
また、資料作成能力も重視している教授は、パワーポイントで作成して提出することを頻繁に学生に求めます。パワーポイントの使用経験がないクラスメイトは資料作成に多くの時間を割き苦戦していたので、MBAに行きたい方はパワーポイントでの資料作成に慣れておいた方が良いと思います。
4-3.おすすめ書籍
授業では以下のテキストを参考としていました。1000ページ超で英語なので、おすすめの日本語書籍も紹介しておきます。
■参考テキスト
Corporate Finance, Global Edition
■日本語でおすすめな書籍
ファイナンシャル・マネジメント 改訂3版---企業財務の理論と実践
現在はマーケティングの授業を受けているので、次回はマーケティングの内容を共有したいと思います。
以上、シンガポールから柳原がお伝えしました。
皆さんもコロナにお気をつけてお過ごしください。